「佐伯さん、まったく成長していないですよね。」
「もうコンサル辞めようかな。」
「お金は返しますんで。」
2021年4月初旬、滝の音が聞こえる風情のある温泉旅館の一室。
少しひんやりとした春の夜風が室内に吹き込む。
暗くてよく見えないが、外には木々が生い茂っているのだろう。
夜風が木々の香りを運び室内を満たしていた。
本当ならそんな夜風を肌に感じながら
ゆっくりとビールでも飲みたい気分になっていたことだろう。
でもその時の私にそんな余裕はなかった。
目の前が真っ暗になるぐらい焦りまくっていたのだ。
頭の中は大混乱。
ヤバイ…ヤバイ…どうしよう。
今までサボっていたのが完全にバレてる。
何で俺は今までちゃんとやってなかったんだろう。
マジでアホだ。
恥ずかしくて情けない…。
穴があったら入りたい…。
そう、その時私はビジネスの先生から
コンサルの中止を言い渡されたのだ。
私は30歳で月収400万を稼ぐネットビジネス起業家の
しーなさんからコンサルを受けている。
その金額は半年間で100万だ。
100万を払ったにもかかわらず、
私はしーなさんに言われたことをやっていなかった。
見られていないのをいいことにサボっていたのだ。
そんな私の態度や甘えをしーなさんは完全に見透かしていた。
この日、私としーなさんは温泉旅館でビジネス合宿をしていた。
合宿では先生からテーマが与えられて
制限時間内に回答しなければならない。
まるで大喜利だ。
でも私はまったく答えることができなかった。
制限時間のことを考えると焦る。
焦れば焦るほどしゃべれなくなる。
しゃべれたとしても内容がショボい。
原因はすべて私の努力不足であり実力不足。
ぐうの音も出ないくらいにダメな自分を直視させられた。
「何もできていない」という厳しい現実を突きつけられた。
私は「できていない自分」を見ようとしていなかった。
プライドがそれを許さなかった。
できていない自分を認めて傷つくのが怖かった。
だから実力がないにもかかわらず、
それを取り繕うようにしてやり過ごしてきた。
そして取り繕ってばかりいたら
「できる」と勘違いするようになった。
「俺って頑張ってるだろ。」
って、自分で自分を褒めるようになった。
マジで愚かでしょうもない。
そんな自分が歯がゆくてしょうがない。
温泉旅館の一室で30代半ばのおっさんが泣きそうになっている。
とにかくみじめ…。
みじめ以外の何物でもない。
今の自分じゃコンサルを中止されても文句は言えないな…
だって言われたことをやっていないんだから。
先生の時間をムダに奪っていることになる。
でも本当にこのまま終わってもいいのか？
やりきっていないのに後悔しないのか？
いやこのままじゃいけない。
できていない今の自分をちゃんと認めよう。
そしてやるべきことをきちんとやろう。
今回の合宿で感じた悔しさや情けなさ、恥ずかしさ、みじめさ…。
負の感情のオンパレードだ。
逃げたらどんなに楽になれるだろう。
でもこの感情を乗り越えれたなら、
さらに成長できることを私は知っている。
そう、それを知ったのは
初めてしーなさんと会った時のことだった。
私が初めてしーなさんと会ったのは今から2年前の夏。
場所はタイのホテルのロビーだった。
私はビビりながらもしーなさんに会いたい一心で
タイを訪れていた。
古着転売で稼げなくて悩んでいた私は、
そのことをしーなさんに相談した。
そして私はしーなさんに徹底的にダメ出しされたのだ。
「佐伯さん、そもそもちゃんと作業してますか？」
「やっていないですよね。」
「言われたことができてないのに何言ってるんですか？」
情けなくて涙が出そうだった。
できていると勘違いしていた自分をぶん殴ってやりたかった。
とにかく悔しくてみじめだった。
だから古着転売を辞めてこのまま楽になろうかとも思った。
逃げてしまおうかとも思った。
でもそれは嫌だった。
絶対に負けたくなかった。
しーなさんにというよりも自分に負けたくなかった。
そんな感情に負けるような自分にはなりたくなかった。
だから帰国後は古着転売をやりまくった。
今までにないくらい作業に打ち込んだ。
徹底的に戦略を練って考えに考えぬいた。
そうしたら自然と結果が出るようになっていった。
行動しまくっていたら悩む時間がなくなって
モチベーションに左右されなくなった。
行動すればするほど、
どんどんポジティブなサイクルに入っていった。
そして昨年、副業の古着転売で月収50万を達成できた。
全然満足はしていないけど、
ショボい自分がまさか50万も稼げるなんて…。
正直驚いた。
こんな風に稼げるようになったのは、
あの時タイでしーなさんに会ったから。
今までに経験したことがないくらいの悔しさや恥ずかしさ、
情けなさ、みじめさを感じたからだ。
あの感情を感じていなかったら、絶対に今の自分はない。
今の自分があるのはあの感情をバネにして行動し続けたからだ。
今回の合宿では自分の努力不足、
実力不足を痛感することができた。
そして初めてタイでしーなさんと会った時の感情を思い出させてくれた。
失敗が怖いとか、傷つくのが怖いとかはどうでもいい。
合宿で感じた悔しさや恥ずかしさ、情けなさ、みじめさに比べれば
大した問題じゃない。
このままでは終われない。
絶対にもっともっと成長してやる。
そのためにやるべきことはただ一つ。
教えてもらったことを意識して行動しまくる。
ただそれだけだ。
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